亀谷工場長編

滝浦を育てた伊藤ハムの男たち

目黒工場で入社歴最短で班長に昇格した仕事人(一般~班長~係長~課長…工程は係単位で組織化され、先ずは班長になることが出世の第一歩)。管理手法に賛否両論あるが、私が知る限り製造工程技術者に対して日夜食肉加工の理論武装論を説いた初めての製造管理者。

【第1話】製造3法(食品衛生法、日本農林規格、食肉加工論)の教育訓練 柏工場製造二課(ハム・ソーセージ味付け、充填)男子は毎週土曜日仕事終了後、柏工場屋上の集会室で、学科講習…プリントを全員に配布、理論武装講習に北村先輩を筆頭に、同僚、後輩は熱心にペンを走らせ勉強していた。予想にたがわず滝浦は熟睡休息時間の勉強会。…この勉強会のプリントが後々私の業務バイブルになるとは当時は予想もつかず、楽しみにしているサタデーナイトフィーバーを侵害する横暴な責任者と反論ばかりしていた。

【第2話】東北工場酒飲み三銃士~工場長役の亀谷課長は理論派、ボイル・包装の武部課長さんは実践派、単味品の岡田課長さんは調整役で、酒の肴はいつも「東北工場をどう作り上げるか」を夜明けまで話し合う。酒飲みではない私は酔っ払いが同じことをくどくど説き会う時間帯は大の苦手でコックリさんであった。どちらにしても伊藤ハム東北工場の地盤づくりに功績をのこした勇猛果敢な三銃士であった。…構築された東北工場地盤は、後々伊藤ハムを代表する熱烈社員である伊原工場長に受け継がれ、モノづくり、人づくりをベース得意先づくり戦略を重要課題と取り組み、東北地域の主要な取引先とのパイプアップを実現し業界屈指の新鋭工場に飛躍される。物心両面で厳しく教育訓練された人財は、本社社長を筆頭に、デイリー社長、常務、工場長と革新的会社幹部を多数輩出して人は石垣人は城を身をもって実践した。

【第3話】生産管理マニュアルづくりに自力発揮伊藤ハムが得意とするKKD(経験と勘と度胸)の業務管理を理論的に「仕事の見える化」を積極的に進め、管理表、管理マニュアル、業務の記録とPDCA手法を導入して工程管理を改革する。…私のKKDD(経験・勘・度胸・でたらめ)の管理手法を徹底的に意識改革させられた。…学ぶより真似ろの原則に沿い、亀谷工場長の一挙手一投足を見よう見まねでコピーする。コピー化することで自分をできる人間にすり替える「錯覚療法」で自己啓発を目指した。日常言動に始まり書式字体まで真似る。社内の文化祭で亀谷工場長が書道で銀賞表彰される。真似して書道教室に通い始め翌年の文化祭では私が銀賞、工場長は銅賞、目的は達成したので書道器具をすべて廃棄した。日常の文章記帳で字体などチョット見ではどっちが書いたか分からないほどコピー化が進んだ。

【第4話】人間性の個人差に万難を拝して自立 日常のコピー生活に激震が走る。「お前が私の真似をしてくれるのは嬉しいが、言動を真似るだけではなく性格や人間性も真似してくれ」。この一言で私のコピー人生は崩壊した。人間性は先天性の問題で本質的に変えられるものではない。この時を境にコピーのすべてを放棄して自立の道を彷徨う。…自主的に何かを学ぶという自覚に乏しく、改めて勉強という意味を勉強する勉強をすることによって勉強をしない自分との間に大きな差が出ることを知、勉強して頑張りたくなる気持ちを。中高社会人を通しての8年間、剣道一直線の自分史を紐解き、剣道が強くなる事と仕事力を身につける事の共通プロセスを再認識する。

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