柴尾部長編

滝浦を育てた伊藤ハムの男たち

私が営業部に異動して初めての上司、正視社長のデイリー営業組織を口撃したせいで人事体制強化の一環で、伊藤ハム本体の営業部隊から引き抜かれデイリー営業責任者に抜擢された人格部長。若かりし頃は生産部勤務も熱い血潮を組合活動に捧げて「是は是、非は非」を貫き、経営陣との確執の中、持ち前のいい人、人間性が重宝されて営業部に異動、穏便な人事異動で残された伊藤ハムきってのいい人、野武士部長。

第1話 第一回営業会議ボイコット事件

 東北地区には営業組織が二つありブル組織体系にあった。一つは伊藤ハム本社管轄でH営業部長率いる古参6営業所と東北工場を母体とした滝浦率いる新参の東北営業部隊13営業所です。初めての合同営業会議の席上、正視社長が新参組の盛岡営業所若手Y所長の営業方針発表を中傷する言動を発した、古参営業所長らの薄ら笑いと馬鹿にした視線、なによりも長年Y所長を教育、業務指導をしてきたK営業部長が同席しているにもかかわらず、正視社長に同調する姿勢に正義感の強い私の心底を逆なでした。休憩時間を挟んで会議が再開されたが、くだらない会議内容にあきれた私は13人の新参組所長を引き連れ別室にこもって会議をボイコットした。直属上司の柴尾部長は「会議室に戻れ」と恫喝されるが、「こんな旧態依然としたくだらない親方日の丸営業会議なんか参加しません」と拒否した、「正視サンが怒っている、後で話を聞くから、全員を席に戻せ」と説得され、13人の新参所長に頭を下げて「こんなつまらない営業会議で申し訳ないが我慢して出席してくれ」と会議室に戻った。…みんなあきれた顔をしている。正視社長の厳しい視線が痛いほど突き刺さるが、悪いのはこんなくだらない営業部隊を作ったそちらの責任でしょ(心の声)。…後々、正視社長が笑いながら会議の件を話しかけてきたのですいませんでしたと謝罪をして水に流してもらった。

【第2話】予算編成は加減乗除の算数会議

営業予算編成は「前年実績」が基本で、どれだけのばすかの数値を算入して作られる。もともと算数は苦手な私は、「予算づくりなんか国語的に作って、音楽的に楽しんで営業やろうよ」。「もともと基本的な取り組みプロセスの集合体で作られるのが目標だろ」。「会社の方針があるなら管理課で勝手に作ってくれよ、後はみんなでそれを達成するからさ」。「みんな、予算達成を口約束でなく、体で示せ」買ってきた長い巻紙に全員で血判状を作成「K君、これを柴尾部長に提出してくれ、全員命がけで取り組むことを約束するよ」。…本部管理課のK君はあきれて口もきいてくれない。

つづく

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